始まりは、ほんのちょっとの勘違いからだった…「家庭を壊さない程度の付き合い」その言葉の意味を、お互いが取り違えた。職場の忘年会で二次会のカラオケが終わり、そろそろお開きか?そんな空気が流れていた。飲み散らかしたグラスを集めたり、本を揃えたりと、カラオケルームの片付けをしていた私は、いつの間にか置いてきぼりをくっていた。

気が付くと、コートを着かけている彼と二人きり…。
 ちょっぴりどぎまぎして、そそくさとその場を去ろうとした。リモコンを手に持ち視線を落として、さりげなく彼のわきを通り過ぎる…はずだった。足元の視界に前から誰かの足が近づいてきた。そう認識した瞬間、私の唇がすくい上げられるように唇で持ち上げられた。彼の唇で…。

 体が凍りついたようにこわばる。彼は私の腰に手を回すと、引き寄せて唇を強く押し当てながら、舌を入れようとしてきた。久しくディープキスから遠ざかっていた私は、喉の奥が締め付けられるような感覚におそわれて、応じる事が出来なかった。ゆっくりと唇が離れ体が解放された。

「びっくりした…」少しよろめきながら彼から離れ、照れ隠しに前髪をかまいつつ、ほんの一瞬彼を見た。が彼の表情はよくわからなかった。ここであたふたしても大人気ないと思い、ゆっくりと歩いて靴をはくと、彼が足早にやってきてドアを背にして私の前に立った。「行かせない」そう言うと再び抱き寄せて、キスをしてきた。


 そして舌を入れようとするが、またもや応じられない…。彼は諦めたのか唇を強く吸いながら、長いキスをした。「お前のせいだぞ。」彼はきょとんとする私を尻目に部屋を出ていった。私が一体何をしたというの…?以前から飲み会のたびに彼は「ねぇ、やらせてよ」と、色んな人に声をかけているのかわからないが、よくちょっかいをかけてきた。

 別に悪い気はしなかった。なぜなら、もともと私は彼に好意を持っていたから。昔付き合っていた人と声がそっくりで、ずっと気になっていたのだ。そんな私の気持ちに気付いていたのか、彼と二人きりで残業をすることになったある日、初めてしらふの状態で彼が言った。「遊びでなら付き合ってもいいよ。家庭を壊さない程度にね。」私は、てっきり「お茶をしたり夕飯を食べたりする程度の付き合い」だと勝手に解釈した。

 まだまだ、男性に対する認識が甘かったようだ。そして軽い気持ちで返事をした。「そうね。楽しいかもね。」と。ちょっとした浮かれ気分から出たこの一言が、彼の何かに火をつけてしまったのだ。そう…彼は案の定取り違えた。私が「体の関係が優先される付き合い」に合意したと…。正月休みが明けて最初の土曜日、彼から私の携帯に電話がかかってきた。

「今日、仕事に来ない?」いきなりの『お誘い』だった。「え?休みなのに?」「仕事いっぱいあるからさぁ…」他愛も無い話をしてやんわりと断ると電話を切った。そばに主人がいたせいもあったが、どことなく落ち着かなかった。あくる日、行くつもりなどなかったはずなのに、言い訳もそこそこに家を出て職場に向かった。


 彼が一人で仕事をしていた。「なんだ…今日来るんなら、そう言ってよぉ。」彼は嬉しそうに笑顔で迎えてくれた。「会いたくて、いてもたってもいられなかったからよ。」とは言わず、少し勿体つけて「寂しいだろうと思って来てあげたのよ。」と言って、自分の席についた。しばらくはお互いの仕事に没頭した。

 ふいに彼が近寄ってきて、私の腕を掴むと「ちょっと…」と引きずっていった。部屋の隅の方、外からは死角になって見えない所へ私を押しやると、抱きしめてキスをしてきた。「どうしたの?震えてるじゃん。」彼が私の背中をさすりながら尋ねた。「緊張してるからよ。」初めての小娘でもないのに本当に震えていた。

 今、自分がしていること、されていることに対して少しだけ罪悪感と恐怖心を抱きながら「好きな人に触れられる」という久しぶりに味わう甘美な状況に恥ずかしさと緊張感が高まって、胸の鼓動が体の外にまで伝わるようだった。彼は私を抱き寄せたまま、服の下に手を入れ、キャミソールの上から背中をなでて、ずっと私を抱きしめていた。その手の動きがなんだか心地よかった。


 その日は何度か部屋の隅へ連れていかれ、抱き合っていた。多分仕事はいくらも進まなかったと思う。こんな職場で…非常に罰当たりである。数日後、彼から「新年会やるけど、来ない?」と声をかけられた。行ってみると、彼と彼の友人数人との小さな会だった。居酒屋でワイワイと飲み食いした後、二次会はいい雰囲気のバーへ行った。

 中は薄暗くて、カウンターしかない店。でも、空間は狭くなくしっとりとした雰囲気で、それだけで酔えそうだった。背の高い不安定な椅子でなく、ソファのようなやわらかくしっかりとした椅子に体を沈め、しばしの談笑。カウンター席ということもあり、話をしているうちに自然と二人組どうしに別れてしまった。

 もちろん私と彼がペア。彼は私の椅子の座るところに手を置くと、そのまま奥に滑り込ませた。「やだ、みんないるじゃん。」彼の手を引き抜く。「見えないよ。」かまわずお尻の下に手を入れてくる。私の耳元に口を寄せると「愛してるよ」と囁いた。懐かしい彼の声…そんな錯覚に陥り、久しぶりの感覚とカクテルの酔いも手伝って、そのまま彼にしなだれかかりそうになるのを必死でこらえていた。

 次の店に行くことになり、足元がおぼつかない私を「大丈夫?」と優しく支えてタクシーに乗せてくれた。彼は私の隣に座って、私の体の上に自分のジャケットをかけた。「?…寒くないのに…」そう思った瞬間、ジャケットの下から彼がふいに私の太腿の間に手を入れてきた。声も出せない。彼の隣には彼の友人が座ってるのに…。私は無言で彼の手を掴むと、引き離した。


 彼もそれ以上の事はせず、ジャケットの下で私と手をつないだまま、おとなしくしていた。三次会ではほとんどの人が酔いつぶれ、それぞれタクシーで帰ることになった。彼が「一緒に乗ろう」と声をかけてきたので、友人達を置いて一足お先に店を出た。タクシーに乗り込むと、彼は運転手に私の家の方面を指示した。そして、私のあごを持って自分の方へ向けると、いきなりキスしてきた。

 舌を絡め唇を吸い、かなり濃厚なキス。「運転手さんが見てるかもしれないのに…」抗おうとしても、首の後ろを持たれて身動きが出来ない。何度も舌を出し入れされ、気が遠くなりそうだった。家までの5分程度、彼は一度も離れることなくキスをし続けた。次第に恥ずかしさも薄れて、呼吸が早くなっていく…。

 家へ着くまでの間、どれくらいの時間だっただろう?彼は一度も離れることなくキスをし続けた。車が家に着くと、彼はお互いの唾液で濡れた私の唇を指でぬぐい、再び軽くキスをして「おやすみ」と言った。彼の乗ったタクシーのテールランプが遠ざかって行くのをぼんやりと見送りながら、あまりに突然で大胆な行為に、しばらくの間顔が火照ってドキドキする胸を静めることができなかった。

 ついに(?)二人きりでの夕食に誘われた。人目をはばかる仲なのに、街中の極々普通の洋風居酒屋で、極々普通のカップルのように食事をした。誰かと会うんじゃないかとヒヤヒヤしている私の気持ちを知ってか知らずか、彼はのん気にビールを飲んでいた。楽しく会話がはずんで時間も過ぎ、店を出ることにした。「次はどうしようか?」あても無く町の中を車で走りながら彼が聞いてきた。

「そうね…」心の片隅で、妙に落ち着かない自分がいる。不安なのか、期待なのか?ある一言を待っているかのように、言葉少なになっていた。「二人じゃカラオケって言ってもな…」カラの空間を埋めるように彼の言葉が続く。そして、ほんの少し沈黙が流れると…「後はデザートを食べるだけだな。」ふいに彼が言った。

「何が食べたい?」「お前だよ」「?!」緊張感が解けた直後のいきなりの一言で、衝撃のあまり、そこに心臓があるかと思うほど頭の中がガンガン鳴り響き出した。恐ろしく間延びした沈黙の後、白々しく「えっ?」と聞き返すのがやっとだった。彼は、私のリアクションでさっきの言葉の意味を理解していると認識したのか、くり返す事はしなかった。

「嫌なら無理にとは言わないよ。」大人の男らしく、少し引いて様子をみる彼。「嫌じゃないけど…」つい本音が出てしまった。「じゃぁ…」彼の中で行き先が決定したようで、スピードが加速して体がシートに押し付けられた。そのまま無言のドライブが続き、気がつくと車はすでにネオンが輝く建物の中に吸い込まれていた。

 エンジンが止まる…とうとう来てしまった…体が硬直して動けない。彼はシートベルトをしたまま固まっている私を抱きしめると「いいだろ?」と訪ねた。再び懐かしい感覚が蘇ってくる…。でもここにいるのは昔の彼じゃない、別の男(ひと)。私は人妻だ。そんな現実に罪悪感が湧きあがる。しかし、主人とは違う男性とホテルに来たという、非現実的な状況が理性を麻痺させ、極度の緊張とパニックで頷くことすらできなかった。


 往生際が悪いけど、ささやかな抵抗として、自分からシートベルトを外すことだけはしないでおこう、と決めた途端、彼は私のシートベルトのボタンを押し「行こう」と車を降りてしまった。彼の後について部屋に入った。彼はラブソファに私を招き、座らせると抱きしめてキスをしてきた。彼の手が私の肩から腕へ、そしてスカートの上から太腿をなぞる。膝まで下りると再び上へ…今度はスカートの中へと滑り込ませた。体をこわばらせる私に構わず、彼は服に手をかけると、せっかちに脱がし始めた。

「やだ、恥ずかしい!」弾かれたように抵抗する。「服脱がなきゃ、シャワー浴びれないじゃん。一緒に入ろうよ。」「いや、絶対いやっ!」情けないほど子供のように「いや」と言い続ける私に彼も諦めたのか、自分の服を脱ぐと「じゃ、先に入ってるな。後からおいでよ。」と言い、バスルームへ入って行った。ファスナーが下ろされたスカートは斜めにずり落ち、惨めな格好で一人取り残された。

 今さら引き返せない…うなだれながらスカートをはきなおすと、ソファに座った。とても後から入っていくなんてできない。ぼんやりと周りを眺めて過ごしていると、シャワーだけ浴びて出てきた彼が物陰から顔を出した。「あがったよ。まだ脱いでないの?」「…」「しかたないな…。」バスタオルを腰に巻いた彼は私の前へ来ると、さっきとは違って優しく服を脱がし始めた。

 彼の前でスリップ姿になった私は、そこで裸になる事はできず、物陰に隠れて脱ぐと、すぐにバスルームに入った。私はバスタオル一枚だけを身にまとって、ソファに腰掛けている彼のもとへおずおずと歩いていった。彼はいきなり私を「お姫様だっこ」すると、ベッドへ連れて行った。そっと下ろし、私の上へ覆い被さってくる。もう、彼に身を委ねるしかない…

 私は主人とはすっかりセックスレスになっていて、男性と肌を合わせるのは久しぶりだった。初めてでもないのにひどく緊張して、すっかり固まってしまっていた。でも、思ったより体は正直だった。彼の愛撫に敏感すぎるほど感じている。胸の突起を口に含まれるだけで声が出てしまう。「そんなに感じるの?」彼は上目遣いに私を見ると、意地悪く笑みを浮かべた。


 彼の愛撫の仕方は、私が今までに経験した事が無いものだった。少し力が強めで、やや荒い。される事・受ける感覚全てが初めてで、どうしたらいいのかとまどっているうちに、未知の快楽へと溺れていった。「胸だけでイッちゃダメだよ。」そう言うと彼は下がっていき、太腿に手をかけると思い切り左右に開いた。

「あんっ!いやっ!恥ずかしい!」身悶えするも、彼の力の強さにびくともしない。あらわになった私の秘部へ、彼は有無を言わせず顔をねじ込んだ。「はぁんっ!」思わずのけぞる。彼の舌が奥へともぐりこんで、愛液をかき出すように出入りする。何度も何度も…「あっ、あぁっ!」背中が弓なりになって、硬直する。溢れ出る愛液を飲み干すように、彼は唇を押し当てると強く吸った。

「あぁぁん!」痛いほど強く吸われ、気が遠くなりそうだった。彼は顔を離すと、体勢を変えた。途端に股間に衝撃が走った。彼の指が私の中ですごい力と速さで動き、下半身がガクガクと揺さぶられる。「あっ、あぁっ、あぁぁっ!」あまりのすごさに快感を通り越して、怖ささえ感じるほどだった。

「どうして欲しい?」動きを緩め、わざと焦らすようにゆっくり動かしながら、彼が尋ねる。「あっ…わ、わからない…」喘ぎながら、やっとの思いで答えた。「それじゃどうしたらいいかわからない。ここがいいの?それとも、ここ?」彼の指が妖しく動めく。「あっ、あぁん!」どこをどうされても感じてしまう。「ん?ここかな?じゃぁ、どういう風にして欲しい?こう?こんな風?」浅い所で出し入れされたり、奥をえぐるように掻き回されたり…もう気が狂いそうだった。

「どうやら、奥の方がいいみたいだね。」彼は私の反応から鋭く察したようで、ポイントを定めると一気に攻め立ててきた。どんどん力が増して動きも荒くなっていく…「あぁっ!あっ、あっ、あぁん!」もう、喘ぎすぎて呼吸困難になりそう…指が抜かれても、眩暈のような快感と疲労が交互に押し寄せてくる。


 休む間もなく腰をつかまれ、あっと言う間に四つん這いにさせられ、後ろから指を突きたてられる。「あうっ!」思わず髪を振乱してのけぞった。指の勢いで前へ倒れそうになるのを必死で耐える。と同時に、彼の指が別の場所を刺激してきた。硬く閉じられた禁断の場所。主人にも許したことの無い場所をまさぐり始めた。

「あ!いや…」背中を丸めて抵抗する。「本トは感じるんだろ?反応してるじゃん。」次の瞬間、指に力が入って無理矢理こじ開けようとした。「いやぁぁぁっ!」半泣きになりながら抵抗すると「わかった。もうしないよ。」と抱きしめてキスをした。そして、再び仰向けにされ、両膝を掴まれて大きく左右に開かれた…と思ったら、彼のモノの先端が蜜の滴る入り口に触れたのを感じた。

 次の瞬間…ズッ…ズブッッ!「うぅっ!」彼のモノが一気に突き刺さった。今までの相手は、私の様子を見ながらゆっくりと入れてくれたので、それが当たり前だと思っていた私には初めての感覚だった。硬く大きなモノが、有無を言わせず私の股間に根元まで押し込まれる、突き立てられる…どう表現しても表せない感覚。

 久しぶりに男性のモノを体で感じたため、痛さもあったはずだが、それを感じる暇も無いほど強引だった。体ごと持って行かれそうなぐらい荒くて激しい彼の動きに、私は大きく揺さぶられながら、子宮にまで届く衝撃を感じて、めちゃくちゃにされてしまいそうだった。「はぁっ、あっ、はぁんっ!」容赦ない彼の突きに、喘ぐ声もかすれてくる。

 彼は次々に体位を変え、仰向けのまま私の腰を持ち上げて突いたり、両足を肩にかけ前のめりになって奥まで突いてきたり…めまぐるしい変化と攻めに、私はほとんど気を失いかけていた。ふいに両足を大きく広げられ、彼の腕にかけられて、彼が腰を寄せてモノを根元まで突き立てると、回転させながらさらに押してきた。


 足が大きく開かれているせいで、私の最も敏感な部分があらわになり、押されて彼が回転するたびに当たってグリグリと刺激される…。硬くなった蕾から体中を電気のような快感が貫き、私は一気に覚醒した。「あぁぁっ!もうダメっ!」「イクよ」彼は短く告げると昇天した。私も上り詰めた階段を急速に降下しながら、ぐったりと脱力した。

 そから後は…彼の車で帰ってきたのだが、あまりの快感と脱力感、そして疲労感のため、茫然自失でよく覚えていない。そんな初デートの後、彼とは数度肌を合わせることとなった…。