私は12歳でした。クラスにも男女交際をしている子達がいたりして、異性にちょっと興味を持ち始めた年頃。すっかり大きくなった体にランドセルが不釣合いになった年頃。まだセックスがどんなものかなんて、よくわからなかったけれども、でもそれはいやらしくて、恥ずかしくて、後ろめたいもののように勘違いしていたころ。通学路に薄暗い墓地がありました。私の家の周りには子供が少なく、学区域ほぼぎりぎりだったために、墓地の前を通るときにはいつも一人でした。薄暗い街灯がぼんやり灯る道を、墓地から目をそらして一気に走りぬけたのを覚えています。 近所に、体の大きな青年が住んでいました。青年はいくらか風変わりな空気を持っていま した。今思うと、いくらか脳障害があったのかもしれません。私はある日の下校中、その青年にレイプされたのです。横道から私の腕をぐいと引っ張りこまれました。すでに下半身はむき出しで、だらんとペニスが垂れていました。 抵抗なんてできるわけがありません。巨体に押しつぶされるような形で組みしかれました。青年は私の体操着と下着を引き下ろして、無理やり開いた足の間にペニスをこすりつけ始めたのです。「セックスをされてしまうんだ」そう思いました。柔らかくぶにょぶにょしたペニスは、こすりつけている間に膨らみ、だんだん硬く腫れてくるのがわかりました。それでも私は声も出せませんでした。声を上げたら、叩かれるかもしれない。醜い風貌の男に犯される自分を人に見られたくない。そう思って口をつぐんでいました。いつしか私の入り口を見つけると、一気に腰を落としてきました。肉が、というよりは、骨を裂かれる痛み。忘れられません。どういう気でいるんでしょう。そこまで荒々しい行為をしておきながら、彼は中出しをすることはありませんでした。あわてて引き抜いて、私の寝転んでいる地面へと吐き出したのです。後に、アダルトビデオを真似ていたのだと思いあたりました。青年は体操着の泥をはたいている私に「人に言ったらまたやるかんな」と小さな声で言いました。怒りはありませんでした。かえって、彼の様子よりも街灯の暗い明かりや夕焼けが夜に変わる色ばかり見ていたように思います。それでも、自分のしたことは汚いことだと思いながら泥を落とすと何食わぬ顔で帰ったことを覚えています。12歳の私には、このことが両親や周りの人間に知られないように振舞うことばかり考えていました。腹が立つというよりは、罪悪感でいっぱいでした。今でも、誰一人として知っている人はいないはずです。彼が、誰かに喋ってさえいないのなら。当事者の彼もすでに、5年ほど前に亡くなってしまったのですから。