硬い硬いそれを、 夢中で貪っていた。

その人が紡ぐ液体は全て飲み込んで、 なのに、 わたしの唾液は、 口の端からだらしなくこぼしながら。

その人の太腿が時々引きつったように動き、 ふと見上げると、仰け反った首筋が目に入る。

そして、荒い息に混じる、隠し切れない声。

すごくどきどきして、 体の真ん中が火照ってくるのが分かって、 多分その時、 わたしの唇や舌は、性感帯になっている。

このまま口の中で達して欲しいと、 わたしは心から思うのに、 いつも頭を抑えられて、その行為は中断させられる。

「もう挿れたくなってきたでしょ?」 ずるい。

我慢できなくなったのは、 絶対にわたしじゃないのに、 そうやって、わたしのせいにするんだ。

でも、わたしは笑って答える。

「うん、挿れて」 そう答えれば、 その人が嬉しそうにするのを知っているから。

ゆっくりその人を倒して、わたしが跨る。

わたしが嫌いな、その人の硬い腹筋を両手で押さえつけ、 わたしが腰を動かす。

上に乗るのは苦手なんだけど、 さっき最後までさせてくれなかった復讐のつもりで、 一生懸命、でも、多分相当ぎこちなく動いた。

わたしの中が何度も満たされる。

求めつつ、弾く感覚。

背骨は甘く疼くのに、 頭はすっきりと冴えてくる。

多分、跨るときに特有の快感。

気付くとわたしは、 背中に汗が滲むほどにそれに没頭していた。

ちょっと苦しそうに喘ぐその人の顔を見て、 わたしは体を動かすのを辞めないまま、 その人の頬に自分の手を重ねた。

そうしたら、 その人は、目を閉じたまま、優しい顔をした。

一瞬。

そして、名前を呼んだ。

その人の、前の彼女の。

心臓がひとつ大きく動いて、 わたしの体は、だんだんに動かなくなった。

それでもその人の胸の上に倒れて、 繋がったまま首に手を回した。

その人は、自分が呼んだ名前に気付いてなかったみたいだった。

それくらい、その人には馴染んでいる名前なんだと思った。

そのままひっくり返されて、 何度も何度も奥まで突かれた。

いつもより声が出た。

止まらなかった。

いつもは言えないような言葉も言えた。

気持ちいい。

すごい。

大好き。

もっとして。

急がないで。

いまは、ゆっくり。

おねがい。

いっしょに。

最後は、いっしょに。

かっこつかない、わたしの叫び。

もうどんなにイっても冴えることのない頭は、 わたしがひとりで冷ますしかない。

聞かなかったことにするから、 わたしを愛してとも、 昔を忘れてとも言わないから、 いつか、そのきれいな名前の女の子との思い出を、 わたしに話して聞かせてね。